研究内容

当研究室では,従来法では機械的特性の評価が困難な材料に対して,曲げや共振などの力学的原理を利用した新しい評価法を構築し,これまで不明であった機械的特性の解明に取り組んでいます.主に対象にしているのはセラミック遮熱コーティングであり,航空機エンジンのガスタービンブレードの更なる高温化(高効率化),安全性確保,長寿命化に貢献することを目指しています.

・曲率法に基づく遮熱コーティングの残留応力形成機構の解明

航空機および発電用ガスタービンエンジンの表面に被覆される遮熱コーティングは,タービンを高温ガスから保護し,エンジンの寿命延伸や,高効率化に貢献します.しかし,遮熱コーティングの被覆中に残留応力が発生します.残留応力は皮膜の損傷の原因となるため,その発生メカニズムを解明することが重要です.しかし,成膜過程中の過酷なプラズマジェット環境下での応力評価が困難なため,残留応力形成メカニズムは不明でした.本研究室では,成膜過程中の曲率変化から,成膜過程中の皮膜応力を高精度に評価する手法を提案しました.その手法により遮熱コーティングの残留応力形成メカニズムの研究を行っています.

・超音波共鳴法による溶射コーティングの弾性異方性の評価

溶射コーティングは多数の溶融粒子が積層することで形成されるため,溶射方向とそれに垂直な方向に弾性異方性を示すことが知られています.しかし,内部欠陥の多さや大型試験片が用意できないことに起因して,引張試験や曲げ試験などの一般的な計測法では弾性異方性の評価は困難でした.本研究室では,超音波共鳴法と呼ばれる計測法を用いて溶射コーティングの全ての弾性定数(5個)を正確に測定し,弾性異方性の評価を行っています.

・遮熱コーティングのヤング率とポアソン比の高精度評価法の構築と解明

タービンブレードの応力計算では,遮熱コーティングのヤング率とポアソン比が必要不可欠です.遮熱コーティングのヤング率とポアソン比は,従来はコーティングの単体を機械加工などにより抜き出して評価されていました.しかし,基材に接合されたままの遮熱コーティングの特性が自立膜と異なる問題があり,基材付きで評価できる方法の開発が望まれていました.本研究室では,基材一体材の曲げから高精度に評価する手法を提案しました.その手法により,熱履歴によって複雑に変化する遮熱コーティングのヤング率とポアソン比の評価を行っています.

より詳細な研究内容は教員の研究業績でご覧ください.